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東日本大震災:流木でバイオリン 1000人がリレー演奏

平成24(2012)年2月23日

ストラディバリウスやアマティなど名器の修復、鑑定で定評のあるバイオリン製作者の中沢宗幸さん(71)が、東日本大震災の津波で残された流木の廃材からバイオリンを作り、世界中のバイオリン奏者1000人が弾き継ぐ活動を企画している。
岩手県陸前高田市で3月11日に初披露 する予定で、現役最高齢のプロ奏者とされるイスラエル人のイブリー・ギトリスさん(89)が最初の奏者になるという。【クレモナ(イタリア北部)で藤原章生】

中沢さんは、長野県上田市とイタリアのクレモナに工房を構え、名器の修復や鑑定、後輩の指導に当たってきた。信州国際音楽村の初代理事長で、現在はNPO法人「日本ヴァイオリン博物館」理事長を務める。 震災後、被災者のために何かしたいと思ってきた中沢さんは「人は時とともに災害を忘れ、自然への畏怖(いふ)も薄らいでしまう」との思いから、流木で作ったバイオリンを1000人がリレーのように弾き続けるというプロジェクトを考えた。「生きている人を励まし、亡くなった人の鎮魂のためにコンサートを続け、忘却を少しでも食い止められれば」と願う。企画は「千の音色でつなぐ絆」と命名され、長男の会社員、創太さん(27)も参加。
昨年12月、知人で長野県にある上田第三木材の島田基正会長とともに陸前高田市と岩手県大船渡市を訪れ、地元の人たちの協力で、山積みになっていたがれきの中からバイオリン作りに使えそうなカエデやマツなどの流木を選んだ。だがバイオリンは裏板のカエデが命だ。名器を生み出す材料はバルカン半島北部のクロアチアやルーマニアの木が多い。製材業の父から学んだ中沢さんは「音色を決める上で一番大事なのは材料。良い物を作りたいが、日本のカエデはやはり違う。硬いけれどすっとノミが入る、バルカンのカエデとは違う」
このため、バイオリンの頭の部分と、渦巻きや側面の部分を集めた流木から作り、表板や裏板はバルカン産のものにすることも考えて製作を進めている。
プロジェクトにはギトリスさんをはじめ、フランスのジェラール・プーレさん、メキシコ在住の黒沼ユリ子さんらも賛同。3月11日以降、このバイオリンを使ったコンサートを世界各地で開く計画だ。

(毎日新聞 2012年2月23日)